政策提言
国会での動向
環境教育等促進法に基づく国の新たな基本方針に、「学校・園庭ビオトープ」が3か所で明記されました。これまでは、「ビオトープ」という言葉が1か所で示されていただけでした。基本方針の改定に当たっては、協会として意見書を提出し、また、国会でも学校・園庭ビオトープの重要性が取り上げられていました。
国の基本方針への今回の位置づけは、学校・園庭ビオトープの整備・活用にこれまで取り組んでこられた全国各地の関係者の皆様のご努力が、反映されたものと考えます。
環境保全活動、環境保全の意欲の増進及び環境教育並びに協働取組の推進に関する基本的な方針(令和6年5月14日)
体験活動を通じた学びについては・・・学校・園庭ビオトープ・・・などの学校等が有する施設等を活用した・・・自然体験活動・・・等の多様な体験活動の促進を、政府として支援します。
多様な主体同士の対話と協働を通じた学びの実践については、児童生徒等が、組織と社会の変革へ参画し、自らの変容につながる学びを促進します。対話と協働の学びは、学校組織の中で進めることも、地域の多様なステークホルダーと取り組むことも、可能です。・・・対話と協働を通じた学びを進めるには、例えば・・・地域の多様な主体との連携・協働が行われている学校・園庭ビオトープのような場を設けること・・・も大切です。
学校における環境教育・ESD においては、持続可能性へ向けて学校全体としてESD に取り組むホールスクールアプローチが大変重要です。・・・ホールスクールアプローチの観点からは、児童生徒等の学習・生活の場としての学校施設を環境に配慮したものとするため、環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備を促進することも重要です。このため、関係府省は、既存の学校施設の改修の際に環境を考慮した改修を行うこと、地域在来の植物に配慮した緑化や学校・園庭ビオトープづくり等を通じて学校の屋外教育環境を整備充実させ、・・・学校施設を教材として活用した環境教育を進めていきます。
会報エコシステム 関連号
No.191(2024年1月号)学校・園庭ビオトープ~子供に身近な自然を~
食料・農業・農村基本法の改正案が衆参両院での審議を終え、令和6年5月28日に成立しました。これについて、参議院農林水産委員会において、農業の生産から消費に至る各段階に関し、政府として、生物多様性の保全にしっかり取り組むようにとの附帯決議がなされました。
参議院農林水産委員会(令和6年5月28日)
農業生産活動は、自然環境の保全等に大きく寄与する側面と環境に負荷を与える側面があることに鑑み、温室効果ガスの排出削減、生物多様性の保全、有機農業の推進等により、環境と調和のとれた食料システムの確立を図ること。
会報エコシステム 関連号
No.183(2022年7月号)命はぐくむ農業
No.193(2024年5月号)大型水鳥との共生~人も水鳥もすみ良い環境を~
2021年5月、農林水産省から「みどりの食料システム戦略」が公表されました。生物多様性の現在の状況等を踏まえ、全耕地面積に占める割合が今わずか0.5%の有機農業を、2050年までに25%(100万ha)に拡大することなどが掲げられています。そして2022年4月22日、この戦略の推進に向けた法律(「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律」)が、国会で成立しました。
この法律案の審議に当たり、参議院農林水産委員会で、以下の①②を政府に求める附帯決議がなされました。
①生態系ネットワークの形成に向けて、農水省・国土交通省・環境省等の関係機関間で密接な連携を図ること
②環境保全型農業直接支払交付金等の既存の交付金制度等を通じ、生態系ネットワークの形成に取り組む農林漁業者等に対し十分な支援に努めること
参議院農林水産委員会(令和4年4月21日)
農林漁業において、多面的機能の発揮の一層の促進を図るため、生態系ネットワークの形成に向けて、農林水産省はもとより関係府省の密接な連携を図るとともに、既存の交付金制度等を通じた農林漁業者等への十分な支援に努めること。
- 国土交通省 「川からはじまる川から広がる魅力ある地域づくり ~河川を基軸とした生態系ネットワークの形成~」
- 国土交通省 「生態系ネットワーク財政支援制度集 ~川・森・農地・海の自然をつないで地域を豊かに~」
- 農林水産省 「生態系ネットワーク財政支援制度集 ~川・森・農地・海の自然をつないで地域を豊かに~」
会報エコシステム 関連号
No.176(2021年7月号)広がり始めたエコロジカル・ネットワーク
流域治水関連法案(正式には「特定都市河川浸水被害対策法等の一部を改正する法律案」)が衆参両院での審議を終え、令和3年4月28日に成立しました。これについて、衆議院国土交通委員会、参議院国土交通委員会のそれぞれにおいて、流域治水の取組において、「生態系ネットワークの形成に貢献すること」との附帯決議がなされました。
衆議院国土交通委員会(令和3年4月7日)
流域治水の取組においては、自然環境が有する多様な機能を活かすグリーンインフラの考えを推進し、災害リスクの低減に寄与する生態系の機能を積極的に保全又は再生することにより、生態系ネットワークの形成に貢献すること。
参議院国土交通委員会(令和3年4月27日)
流域治水の取組においては、自然環境が有する多様な機能をいかすグリーンインフラの考えを普及させ、災害リスクの低減に寄与する生態系の機能を積極的に保全又は再生することにより、生態系ネットワークの形成に貢献すること。
会報エコシステム 関連号
No.176(2021年7月号)広がり始めたエコロジカル・ネットワーク
No.171(2020年9月号)免災 ~危険な場所は避け、自然に還す~
「国土強靱化年次計画2021」(令和3年6月17日、国土強靭化推進本部決定)に、流域治水の取組においては「生態系ネットワークの形成に貢献する」とのことが盛り込まれました。また、グリーンインフラの推進についても、「生物多様性の確保や生態系ネットワークの形成等に寄与する『グリーンインフラ』の社会実装を推進する」とのことが盛り込まれました。
会報エコシステム 関連号
No.176(2021年7月号)広がり始めたエコロジカル・ネットワーク
No.134(2014年7月号)世界をリードするチャンスを手にした日本 ~人口減少というチャンス、グリーンインフラへのチャンス~
地球温暖化対策推進法改正案(正式には「地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案」)が衆参両院での審議を終え、令和3年5月26日に成立しました。これについて、衆参両環境委員会において附帯決議がなされました。参議院附帯決議では、国立・国定公園だけでなく都道府県立自然公園を含めた自然公園内に、太陽光発電施設等の再生可能エネルギー発電施設を積極的に整備する「促進区域」を設けることについては慎重であるべきこと、メガソーラー等の大規模な再生可能エネルギー発電施設を整備する「促進区域」は、原則、認められない、とされました。また、総論として、太陽光発電施設の設置等の地球温暖化対策の推進に当たり「地域の自然環境及び生物多様性の価値を損なうことがないよう十分留意すること」とのことが示されました。
参議院環境委員会(令和3年5月25日)
促進区域に関する基準については、自然公園や鳥獣保護区等の保護地域及び絶滅のおそれのある野生動植物種の生育・生息地等の保護地域への環境保全上の支障を及ぼさないよう、慎重に検討すること。特に、大規模な再生可能エネルギー施設を誘致する促進区域の設定を行う場合には、再生可能エネルギーの種類ごとの特性等を踏まえつつ、原則としてこれらの地域が回避されるような基準を設けること。
市町村が促進区域を設定するに当たっては、環境省による風力発電における鳥類のセンシティビティマップ等を活用し脆弱な自然環境の把握に努めること及び土砂の崩壊等の発生を防止し、水源かん養の機能を有する保安林の取扱いについて、住民生活に支障を及ぼさないよう検討をすることを市町村に対し促すこと。
地球温暖化対策の推進に当たっては、国際的にも生物多様性の確保が喫緊の課題であることに鑑み、本法に基づく施策も含め、地域への再生可能エネルギー導入拡大により地域の自然環境及び生物多様性の価値を損なうことがないよう十分留意すること。
会報エコシステム 関連号
No.175(2021年5月号)太陽光発電の影
太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギー発電施設の設置をめぐり、生物多様性や自然環境が破壊されるとのことから、各地で反対運動が起きています。太陽光発電を含む再生可能エネルギー発電事業者は、「再生可能エネルギー特措法」に基づき、経済産業省に対して、事業計画の認定を申請するに当たり、資源エネルギー庁作成の「事業計画策定ガイドライン」を確認することになっています。ガイドラインには、事業者に対する推奨事項(努力義務事項)として、発電施設を設置する土地の選定に当たっては、保護地域であるかどうかにかかわらず、希少野生動植物の生息・生育地である場合には、十分な考慮が求められる、と明記されています。ガイドラインのこの部分について、令和3年5月7日の参議院本会議において、経済産業大臣から、推奨事項(努力義務事項)であるが、これについても適切に対応していただく必要がある、との考えが明示されました。太陽光発電等の再生可能エネルギー発電事業者から、構想・計画等の早い段階で、予定地について災害の関係等様々な点で問合せがいく地元自治体における、庁内一団となった適切な対応(地域の自然環境に詳しい専門家や環境NGOの紹介等)がまず重要となります。
経済産業大臣(参議院本会議 令和3年5月7日)
「御指摘のガイドラインにおいては、法令に基づく認定基準の遵守に加えて、法目的に沿った事業の実施のために推奨される事項について整理をしているところでありまして、この推奨事項についても適切に対応していただく必要があります。そのため、FIT認定時においては、ガイドラインに従った適切な形で事業を行うことについての同意、誓約を確認をしており、これがない場合には認定をしないこととしております。また、認定後についても、推奨事項への対応が不十分であると疑われる場合には適切な確認、指導を行っていく必要がありますが、これを効果的に実施するためには、当該用地の環境保全上の懸念等の情報を有する地方自治体との連携が重要であると考えております。こうした観点から、地方自治体とは定期的に連絡協議会を開催するなど、日頃から連携強化を図ることにより、適切なチェックを行う体制整備に努めているところであります。引き続き、関係機関とも連携し、ガイドラインに沿った事業運営が確保されるよう、適切に対応をしてまいります。」
会報エコシステム 関連号
No.175(2021年5月号)太陽光発電の影
政府において国土強靭化に向けた取り組みが始まっています。こうしたなか、(公財)日本生態系協会では、欧州環境庁(EEA)より専門家をお招きし、自然生態系のもつ防災・減災機能等を生かす「グリーンインフラ」をテーマとした国際フォーラムを、2013年11月11日に東京で、11月14日に札幌で開催し、また、11月12日には、超党派の国会議員で構成される地球環境国際議員連盟(略称GLOBE Japan)との共催で勉強会を開催しました。これを受け、この勉強会に参加いただいた国会議員より、2014年2月13日の衆議院予算委員会で、欧州において「EU生物多様性戦略2020」に基づき「グリーンインフラ戦略」が2013年5月に策定されていることが紹介され、あわせて、我が国でもこの新しい社会資本整備の考えを取り入れるべきとの意見が、安倍首相に対して述べられました。これに対して、安倍首相より、「我が国の豊かな自然を活用しながらグリーンインフラの整備を進めていくことは、経済、社会両面で有効であり、重要である・・・グリーンインフラという考え方を取り入れて、将来世代に自然の恵みを残しながら、自然が有する機能を防災、減災等に活用していきたいと考えております」と、グリーンインフラに関する積極的な答弁がありました。グリーンインフラとは、一言で言えば、「エコロジカル・ネットワーク(生態系ネットワーク)」のことで、生物多様性の保全・再生に資する森や湿地などの一つひとつの自然及びそのネットワークを、「社会資本」としっかりとらえることの重要性が、「インフラ」という表現に込められています。
グリーンインフラとは 欧州、また米国で、「様々な生態系サービスを提供するように設計・管理された、戦略的に計画された自然地・半自然地のネットワーク」などと定義されています(出所:EUグリーンインフラ戦略(2013年)、米国についてはMark A.Benedictほか(2006年)Green Infrastructure)。上記国際フォーラムの講演録は、当協会のウェブサイトからダウンロードすることができます。
会報エコシステム 関連号
No.176(2021年7月号)広がり始めたエコロジカル・ネットワーク
No.134(2014年7月号)世界をリードするチャンスを手にした日本 ~人口減少というチャンス、グリーンインフラへのチャンス~
委員としての活動
環境省は平成26年12月に「つなげよう、支えよう森里川海」プロジェクトチームを立ち上げました。 官房長をチーム長として、総合政策局、自然環境局、水・大気環境局及び地球環境局の職員(26名)で構成しています。また、有識者をアドバイザーとして置いており、その一人として当協会専務理事の関健志が就任しています。
環境省、農林水産省及び国土交通省は、自然環境に関し専門的知識を有する者によって構成する自然再生専門家会議を設けています。委員として当協会理事の高山光弘が就任しています。
環境省は、令和2年10月に「OECM国内制度等勉強会」を立ち上げました。その委員として当協会専務理事の関健志が参加しています。
OECMとはOther Effective area-based Conservation Measuresの略。法令等による保護地域以外で、民間等の取組により保全が図られている地域や、保全を目的としない管理が結果として自然環境を守ることにも貢献している地域
意見書・要望書
~危険な場所には住まず、自然に還す。人口減少時代の持続可能なくにづくり・地域づくり~